噛み合わせのズレと顎関節の関係について（１）　#47

鹿児島市の歯医者　さとう歯科医院の院長　佐藤裕幸です。

いつも当院のコラムをお読みいただき、ありがとうございます。

インビザラインによる矯正治療について
詳しい内容で投稿してきておりますが、
今日からは、噛み合わせのズレがどのように全身の歪みに影響するのか
について、お話ししていこうと思います。

まず、今日は・・・

噛み合わせのズレと顎関節の関係について（１）

です。

歯並びが凸凹になっていたり
受け口や出っ歯など上下のアゴの位置関係が悪かったりすると
見た目が悪いことはもちろんなのですが
上下の歯の接触関係がズレていることで
アゴの位置がズレてしまうことが多々あります。

なぜ、噛み合わせがズレると、アゴの位置がズレるのか？

それは、下顎の構造に関係があります。

まず上顎は、頭の骨にくっついていますので
上顎の骨の位置などはほとんど動くことはありません。

しかし、下顎はどうでしょう。

人間の身体にある関節は、全て左右別々に動きますが
顎関節だけは、左右同時に動くのが大きな特徴です。

下顎を動かす時は
側頭筋、咬筋、顎舌骨筋、顎二腹筋、胸鎖乳突筋、オトガイ舌筋などなど
大変多くの筋肉の伸縮によって動いています。

左右の筋肉の動きにアンバランスがあったり
片方の筋肉だけが凝り固まってしまったりすると
正常な下顎の動きをすることができなくなってしまうのです

人が物を噛む時、ただ単にカチカチするだけではなく
すり鉢とスリ棒のようにグラインドするような動きも起こります。
そんな複雑な咀嚼運動を瞬間的に行なっているのが
咀嚼筋群であり、顎関節なのです。

たとえば・・・

少々のズレなら本人は気づいていないことの方が多いのですが
微妙に左右の顎関節の位置はズレてきます。
たとえば、下顎が右に少しだけズレているとすると
右の顎関節は、正しい位置よりも若干後方に押し込まれた位置をとります。
逆に、左の顎関節は、正しい位置よりも前内方に少し出てきた位置をとります。

下顎が右に少しズレたとすると
頚椎に対して右側が少しだけ重くなりますから
頭は右に少しだけ傾くはずです。

頭が右に傾くということは
目線も右下がりになるということです。

でも、見た目が斜めになると違和感が強いので
人間はどうするかというと
右に傾いた頭のまま、左肩を少しだけ下げることによって
視線を水平に保とうとするのです。

これによって目線は水平を保ちますが、
頚椎は右に傾き、背骨は逆に左に傾くという
互い違いの方向（くの字）のズレが起こってくるのです

このように、実は、ほんのちょっとした下顎のズレによって
頭やアゴだけのずれにとどまらず
全身が歪んできてしまうのです。

そして、何よりも怖いのは
そのことに気づくことなく進行していくということです。

肩こりや首のこりなら、まだ大ごとにはならないかもしれませんが
腕のしびれや腰痛、膝の痛みなどまで出てきてしまうと
なかなか簡単には元に戻らない状態となります。

逆に、身体に何か歪みがある人は
頚椎や背骨の歪みによって下顎の位置がズレているということがあります。

矯正治療をする場合には、
本来の歪みのない全身状態にした上で
その状態での下顎の正しい位置において歯並びを揃える
ということをしないと
見た目が改善されただけで、全身の慢性痛は治らない
ということになりかねないのです。