さて、今回も顎関節症について、前回の続きを書いていきますね。
顎関節症は自然に治る?放置しても大丈夫?
顎関節症は自然に治るかということについてですが、一時的な行動や姿勢が原因なのであれば、自然に治るということもあり得ます。
また、成長期(思春期)には、身長が急激に伸びることがありますね。その時、同じように下顎骨は成長します。
急激な成長により、膝が痛くなることがあるように、急激な下顎骨の成長により、一時的に顎関節に痛みが生じ、顎関節症の症状を呈することもあります。が、この場合はよほど噛み合わせが悪くて、アゴの位置がズレているということがなければ、成長が止まって落ち着いた頃に症状がなくなるということは割とよくあることです。
以前から10代、20代の顎関節症については、不可逆的な治療を行わず、スプリントと呼ばれるマウスピースを使うなど、もし何かあったら元に戻すことが可能な治療(可逆的な治療)を行うようにすることが望ましいと言われておりました。
また、30代以降になると、自然に症状が出なくなっていくことも多く見られるので、それまでは様子を見るというように教えられたこともありました。
当院ではマウスピース矯正治療を行っております。
ワイヤー矯正では顎位を変えるというのはなかなかできないのですが、マウスピース矯正のメリットとして、矯正中は歯がマウスピースに覆われているため、上下の歯がきちんと噛み合っていなくても、違和感を感じにくいということがあります。
そのおかげで、ズレた顎位を正しい位置に戻すという治療法が可能となります。
当院では、正しい顎位を探し出す方法として『シン中心位』という考え方を導入しております。
顎関節症は放置しても大丈夫か?というご質問がありますが、できることなら改善しておいた方が良いと私は考えています。
特に、すでに顎関節の骨に削れや変形が起こってしまっている方に関しては、自然治癒することはなく、症状はどんどん悪化していくことが想定されるので、症状が酷く、日常生活や仕事に支障をきたすレベルにならないうちに治療しておくのが良いと思いますので、放置しない方が良いと思います。
顎関節症の検査では何をする?歯科医院での診断方法
顎関節症を診断する際の検査には、以下のようなものがあります。
問診
まずは、症状について詳しく訊かせていただきます
・いつから症状があるのか
・痛むのはアゴのどの部分か
・アゴから音がするかどうか
・どんな時に痛みがあるのか(口を開ける時、閉じる時)
・口が開きにくくなっていないか(最大の開口度)
・歯ぎしりや食いしばり、噛み締めの自覚があるか
・普段の生活でアゴに負担をかけていないか
・寝る時の姿勢やスマホを見ている時間などの生活習慣の確認
などを訊かせていただき、現在の状態と原因を探るヒントを得ます。
アゴの動きの確認
実際に口を開ける、閉じる動きをやっていただき、現状を把握します。
・口を開ける時や閉じる時に、アゴがズレて動いていないか
・口が最大でどのくらい開くのか(正常だと最大開口は指3本〜3.5本くらい)
・左右に動かせるかどうか、動かしにくさはないか
・左右に動かした時に痛みはないか
顎関節や筋肉の触診
実際に顎関節や周囲の筋肉に触れて、開口や閉口の運動時に痛みがないかを確認します。
・開閉口時に顎関節に痛みがないか
・周囲の筋肉(こめかみ(側頭筋)や頬の筋肉(咬筋)、首の後ろの筋肉(後頸部の筋肉))に圧痛はないか
顎関節の音の確認
開閉口時に関節から音がするかどうかを確認します。
・開口時なのか、閉口時なのか、音がするのはどちらの関節か、あるいは両方か
・音がするのは、どのタイミングなのか
・どんな音がするか(「カクカク」「ポキポキ」「ジャリジャリ」など)
レントゲン検査
パノラマレントゲンというレントゲンで、顎関節の形態が正常か、骨が削れていないかを確認します。
CT&MRI検査
CTで立体的に顎関節の骨の状態を確認したり、MRIでは関節円板(軟組織)の位置や状態を確認します。
これらの複数の検査を行い、その結果から現在の顎関節の状態を診断していきます。
顎関節の骨に変形などがあるのか、関節周囲の筋肉に問題があるのか、関節円板に問題があるのか、顎関節に炎症や痛みがあるかなどを総合的に判断して、診断していきます。
顎関節症の治療方法―マウスピースや生活習慣の改善
顎関節症は、上でも書いたように関節と周囲の筋肉と関節円板が複雑に絡み合って発症していることが多いので、簡単に治療できるものではありません。
通常は、顎関節への負担軽減のためスプリントと呼ばれるマウスピースを作製し、使用していただくと症状が改善することがあります。ただ、あくまでも使用している時だけの改善になりやすいのが欠点です。
あとは、顎関節に負担をかけていると思われる生活習慣がある場合は、その改善にも着手します。
片方のアゴを下にして寝るとか、よく片方の手で頬杖をつくとか、常に同じ方向を見ることが多い(パソコンやテレビなど)などの生活習慣によって顎関節に異常が出てくることがあるので注意が必要です。
顎関節症になったら気をつけたい食事や日常生活
顎関節症の症状が出ている時は、基本的に顎関節や周囲の筋肉に負担をかけず、休ませてあげることが大切です。
痛みや口の開けにくさがある場合は、以下のようなことに注意してみましょう。
硬いもの、噛みごたえのあるものを控える
症状が出ている時は、硬い肉やナッツ、フランスパン、あたりめなどのように強く噛まなければならないものはなるべく控え、顎を休ませるようにしましょう。
ガムを長時間噛み続けるというのも、硬くはありませんが、顎への負担は相当かかるので、痛みなどの症状が出ている時はやめるようにしましょう。
大きな口を開けないようにする
ハンバーガーや大きめのおにぎりなど、大きな口を開けないと食べられないものをなるべく避け、一口を小さくして口に運ぶようにして下さい。
あくびをする時も、なるべく口が大きく開かないように意識して下さい。特に、痛みが出ていて、口が開けられなくなっている時は、開けられる範囲の大きさに食べ物を小さく切って食べるようにして顎への負担をかけないようにしましょう。
片方だけで食べない
どちらか片方だけで噛んでいると、そちらの関節と筋肉だけを過剰に使うことにより、より症状が悪化していきますので、なるべく左右の歯をバランスよく使って食べるようにしましょう。
歯を食いしばらない
歯ぎしりや食いしばり、噛み締めは、顎関節の負担を増大させます。
仕事中や車の運転など、何かに集中している時に、つい噛み締めている癖の方が多くいます。
正しい歯の位置とは、普段は上下の歯は接触していないのです、軽くでも噛み合わせていたらそれはもう食いしばりで、顎関節に負担をかけます。普段から意識して、常に上下の歯は離した状態にしておくようにしましょう。
頬杖やうつ伏せ寝をやめる
例えば、左手で頬杖をつくと、下顎は右側へ押され、右の顎関節にまで力が及び負担が増えます。
もちろんそれに伴って顎を動かす筋肉にも負担がかかり続けるということになりますので、頬杖はなるべくしないようにしましょう。また、うつ伏せ寝も良くありません。
ほとんどの場合、うつ伏せになって顔をどちらかに向けて寝ると思います。枕に顎を押し付けている状態となります。
枕はいくらか柔らかいとは言え、頬杖と同じように下顎を片方に押し続けていることになりますので、これも顎関節に負担をかける姿勢ということになります。なるべく仰向けに寝るようにしましょう。
長時間のスマホの使用も要注意
前にも書いたように、スマホを手に持って使用する時、必ずうつむく姿勢となります。顔を下に向ける姿勢は、上下の臼歯部が接触することとなり、噛み締め・食いしばりをしているのと同じ状況となります。
また、首や肩の筋肉にも大きな負担となりますので、長時間の連続使用は控える。また、時々姿勢を変えたり、スマホの位置を目然と同じ高さか、それより少し高めに持っていけると、臼歯部の接触も防げて、首や肩周辺の筋肉への負担も少なくすることができます。
アゴを無理に動かさない
アゴから音がするからと、それを確かめるように何度も何度も、わざと音をさせるように動かす方も時々います。
痛みがある時は、炎症が起こっていますので、無理なマッサージやストレッチなどもなるべく避けるべきです。
なるべく早めに歯科医院を受診し、きちんと診てもらうことが大切です。
基本的には、痛みや開口障害が出ている場合は、そのまま様子を見るのではなく、早めに歯科医院を受診し、歯科医師に診てもらうことをお勧めします。
顎関節症を予防するために今日からできること
顎関節症を予防するために、患者さんご自身でできることもいくつかあります。
ずっと書いてきたように、顎関節やアゴの周囲の筋肉に負担をかけない生活をすることが大切です。
ご自身の姿勢を見直すとか、悪い癖をなるべく早くやめるとか、スマホの操作する時間を減らすとか、いくつも改善できることがあると思います。
顎関節症は完全に治せるのか?
当院では8年ほど前より矯正治療に取り組んできました。しかも、ワイヤー矯正ではなく、マウスピース矯正です。
マウスピース矯正だけをするという選択をしたのには理由があります。それは、ワイヤー矯正にはないメリットがいくつもあったからです。
《マウスピース矯正のメリット》
1.見た目が目立たない
2.取り外しできるので、歯磨きなどしやすくて清潔に保ちやすい
3.矯正中の歯の痛みがワイヤーに比べて圧倒的に少ない
4.治療終了時の状態(ゴール)をきちんと設定してから動かすのでゴールが明確
5.矯正治療後の噛み合わせの精度が高い
6.対応できる症例が幅広い(但し、これは診断医、担当医の技量によって大きく変わります)
7.顎位を変えることが可能で、顎関節症の治療にも対応できる
などなど、挙げればキリがないほどのメリットがあります。
当院では、患者さんの負担が少ないことと、より精密なゴール設定ができること、顎位を変えることにも対応できることなどから、マウスピース矯正のみを選択しています。
顎関節症をマウスピース矯正で改善した症例
ある先生から『顎関節症は矯正をしても治らないよ』と言われた患者さんがいました。
当院にてマウスピース矯正治療を行いました。もちろん、頚椎の歪みをきちんと整えた上で、正しい顎位を調べ、その位置で噛めるように歯を移動しました。
来院時は指1本分しか開けられなくて、ハンバーガーはもちろんのこと、おにぎりさえもかじれないと言っていたのですが、1年半ほどの矯正治療後には、指3本分程度は開くようになり、顎関節の痛みやこわばりも全くなくなりました。
レントゲンで見ても、顎関節の骨がかなり削れていたのですが、矯正終了後1年ほどで、削れていた骨の上に、新しい骨が添加されているのが確認できています。これからどんどん正常の顎関節の状態に骨が回復していくものと思います。
この症例を通じて、当院の頚椎の歪みのない状態の正しい顎位にて矯正治療をすれば、かなりの確率で、顎関節症で悩んでいる方を救えるのではないかと感じています。
歯や噛み合わせとは関係ないと思っている方もたくさんいます。まさか、めまいとか、視野の問題とか、そんなものが噛み合わせと関係しているとは、ほとんどの人が思っていません。
しかし、当院で頚椎の歪みを整える、全身の歪みまで診た上で噛み合わせを診るという治療をしていると、首や腰、股関節や膝などの不調の原因も、噛み合わせや顎位にあることがかなりの確率でありそうだと最近では感じています。
症状が出ていない方もたくさんいますので、関節の骨が削れていても全く症状なく過ごされている方もたくさんいます。
それはそれで、そのままでも良いのですが、いつか症状を発症する可能性は高いと思います。できる限りご自身の顎関節に変形などを起こさないうちに正しい対応をしておくことが、ひいてはご自身の歯を長持ちさせることにも繋がります。
まとめ
矯正治療なしで顎関節症を完全に治すというのは、対症療法的になりますので、なかなか難しいと思います。もちろん一部の患者さんは、スプリント療法や咀嚼筋マッサージやストレッチなどで症状が改善することもあるでしょう。
ただ、顎関節の骨が変形するほど傷害を受けている場合は、一時的な改善にとどまり、何かのきっかけで症状が再発することがあると思います。
ということで、当院において行なっている、正しい顎位を診断し、その位置での歯並びを完成させるという治療を行えば、関節円板の位置を元通りに回復させることも可能となります。
ここまで回復させれば、かなり状態は良くなり、完治に近い状態まで回復させることができるのではないかと感じているところです。100%とは言いませんが・・・


